Sunday, May 08, 2005

海のジプシー

ミャンマーの海のジプシー

タイ から、ビルマの西沖合いメーグイ アーチップラーゴ南諸島をベースに周辺の海を棲家にする海のジプシー、モーケン族。ナショナル ジオグラフィック4月号から抜粋。(”Sea Gypsies of Myanmar” by Jacques Ivanoff, P36-P54, National Geographic April, 2005.)

4000年もの間モーケン族は小さな屋根付きの船で海の幸、あわび、海亀などを採ってくらしてきた。彼らは漁師ではなく、海の狩人。森の狩りの道具を海で使う。雨季になると、陸に上がる。高床式の仮の庵に住み、満月には先祖を祭る儀式を行う。ところが、今、タイ、ビルマでは、彼らの定住化がすすめられ、彼らの古くからの信仰行事が観光化されようとしている。筆者は閉鎖的な彼らの生活の中に入りこんで、この記事を書いてくれた。実際の生活は厳しいものがあるはずだが、そこには「詩」になる景色がたくさん見つけられる。
筆者の詩心ももちろん、モーケン族の生活そのものに詩心が潜んでいるのではないか。その一部を下記に記す。

By necessity the Moken straddle two worlds:
They have embraced the sea
And befriended the land,
both vital to their survival.

モーケン族は二つの世界に両足をのせて立つ必要がある。
片方は海を抱き、もう片方から陸の恵みを得る。
この二つの世界が、生き延びていく彼らの生命の活力。
(”Sea Gypsies of Myanmar” by Jacques Ivanoff, P44, National Geographic April, 2005.  和訳:Map)

雨季と台風の季節がおわると、彼らはまた、海のジプシー。船に乗って大海原で暮らす。

“Oh! Young man, may the wind fill your sails.
I ask the seven gusts of wind to come and blow.
May they push the boat of the young man who is going home.”

若者よ。風が船の帆を一杯にして進んで行くことを祈る。
七つの風の到来者を呼んできて、ふーっと風を吹いておくれとお願いしよう。
若者がふるさとに帰れるように、彼のボートを押しておくれとお願いしよう。
(”Sea Gypsies of Myanmar” by Jacques Ivanoff, P43, National Geographic April, 2005. 和訳:Map)

若者は風にのって、海にむかって船をだす。海が彼のふるさとだ。子供も船の上で生まれ、日々の営みが海原の上で変わることなく続けられる。そして、モンスーンが雨雲を運んでくると、船は風に運ばれて陸のふるさとにまた戻る。

何千年ものあいだ彼らは陸と海、海と陸と生きてきた。
その中の誰かが何度か日本に来たにちがいない。
私たちにも海のジプシーの血が流れているはず。
水平線に黒雲がわいてまたたくまにこちらに動いてくる。
サンダルが波にとられて沖に流されていく。
そんな時、心がキューンとしめつけられるのは
きっと、海のジプシーの血が騒いでいるからにちがいない。